インライン品質管理システム「レノウエーブ®(Rhenowave®)」によって、ゴム加工段階における品質を確保します。
ランクセスは、インライン品質管理システム「レノウエーブ®(Rhenowave®)」によって、タイヤにも他のあらゆるゴム製品にも対応する、工業用ゴム製品の製造における新たな基準を打ち立てました。「レノウエーブ®(Rhenowave®)」によって、製造メーカーは配合ゴムを加工段階中にモニタリングすることが可能となり、潜在的な欠陥を発見することができるようになりました。今回のインタビューでは、新技術マーケティング部門マネージャーのベンジャミン・ベッケム博士と、アプリケーション・テクノロジー部門責任者のディエク・ケンパー博士の両氏が、「レノウエーブ®(Rhenowave®)」の機能とそのメリット、また、同システムによる配合ゴムのインライン品質管理といった新たな領域へ進出した背景を説明しています。
Q:ベッケム博士、ランクセスが開発した「レノウエーブ®(Rhenowave®)」技術は、ゴム産業に変革をもたらすものとして高く評価されていますが、それはなぜなのでしょう。
ベンジャミン・ベッケム:「レノウエーブ®(Rhenowave®)」によって、お客様は、配合ゴムの品質に関するデータを、随時入手できるようになりました。配合ゴムの均一性や組成の状態などが、製造中に確認できるようになったのです。以前は、製造完了後まで確認することはできませんでした。つまり「レノウエーブ®(Rhenowave®)」は、ゴム産業において1つの道しるべを打ち立てたと言えます。これは、工業用ゴムの製造段階で使用できる革新的なインライン品質管理システムなのです。
Q:ケンパー博士、あなたが開発の監修をされた「レノウエーブ®(Rhenowave®)」という技術は、どのようなものなのでしょうか。
○ディエク・ケンパー:「レノウエーブ®(Rhenowave®)」は、既存の押出機のヘッドに取り付けられます。測定ユニットは、超音波エネルギー変換器2台、送信器と受信器の各1台からなり、配合ゴムがその間を流れる仕組みになっています。送信器が生成した一貫性のある超音波信号は、配合ゴムを通って、受信器に伝わります。超音波信号の強度は、送信器から受信器に伝えられる過程で弱まると考えてみてください。信号強度が弱まる度合いが、現在使用中の配合ゴムの組成についての特徴となります。
Q:実際に、信号強度が弱まる度合いはどのように現れるのですか。
○ケンパー:配合ゴムの成分によって、超音波信号は、様々な異なる波形を描きます。このため、新しい応用分野で「レノウエーブ®(Rhenowave®)」を使用する前には、「レノウエーブ®(Rhenowave®)」を較正し基準値を定めるため、基準配合が必要となります。そうすることによって、配合成分中の不純物や濃度差異の検知が可能になります。お客様は、システム画面上に集計されるデータを確認し、即座に工程に介入することができます。
Q:つまり、お客様が、連続して製造工程を管理できるということですか。
○ケンパー:その通りです。「レノウエーブ®(Rhenowave®)」は、1秒間に少なくとも10回の信号を生成します。この様々な測定データが、連続したインライン品質管理を可能にしています。
Q:このプロセスが、配合物に多少なりとも悪影響を及ぼすことはないのですか。
ベッケム:絶対にありません。それは、「レノウエーブ®(Rhenowave®)」を使用することのもう1つのメリットでもあります。このシステムは非破壊で管理します。従来の機械的試験方法では、少量のゴム配合物をサンプルとして抜き取り、加硫します。工業用ゴムの場合、抜き取られたサンプルは、他の形に成型することも、試験後に製造工程に戻すこともできません。そして、サンプルの分析結果が、残りの大量の配合ゴムに適用されることなります。
Q:つまり、抜き取られたサンプルは、もう使えないということですか。
ベッケム:そういうことです。従来の方法を用いる場合、試験用のサンプルは少量でなければなりません。そうしないと材料の多くが無駄になってしまうからです。しかし、「レノウエーブ®(Rhenowave®)」を使えば、そのような問題はありません。測定中も材料が損なわれることはありません。
Q:他の測定方法と比較して、他にもメリットがありますか?
ベッケム:もちろんです。例えば、収集されたデータは、配合物全体の結果を表しています。次のように考えるとわかりやすいでしょうか。通常、100キログラムの配合物に対して、100グラム程度のほんの少量のサンプルを抜き取り、研究所で検査します。得られたデータは、残りの配合物全体に適用されるわけですが、欠陥部分が発見されないで残っている可能性もあります。「レノウエーブ®(Rhenowave®)」技術と、連続インライン品質管理を使用すれば、お客様は、配合物のごく一部に関するデータのみならず、数キログラムの配合物、あるいは配合物全体のデータについても入手することができます。さらに、このデータは、10分後や製造の数日後に得られるわけではなく、その場で入手可能です。つまり、欠陥が検知された場合、即座に工程に介入することができるわけです。
Q:ということは、スクラップも少なくなるということですか。
ベッケム:その通りです。配合物が必要条件を満たしていないというデータが出るまでに、かなりの時間を要する場合、大量のスクラップが発生します。しかし、「レノウエーブ®(Rhenowave®)」を利用すれば、欠陥が判明した配合物の一部のみを除去すればよいので、発生するスクラップ量を減らすことができます。これにより、生産高とプラントの生産能力が両方高まるので、時間的、財務的な利益がもたらされます。
Q:「レノウエーブ®(Rhenowave®)」はどんな時に利用されるのですか。
ベッケム:主に、天然ゴムが工業用ゴムに加工されるときに利用されます。「レノウエーブ®(Rhenowave®)」の利用に必要なのは、対象物質の動きだけという簡便性のおかげで、研究所の科学者たちが天然ゴム配合物に関するデータを収集し、そのデータを基に配合物を最適化するために使用されています。
Q:「レノウエーブ®(Rhenowave®)」を使用する際、生産拠点が要因となることはありますか。
ベッケム:それは関係ありません。それが、「レノウエーブ®(Rhenowave®)」を利用するメリットでもあります。お客様が、どのように生産拠点を設定するかを自由に決めることができます。配合ゴムに関するデータは、セントラルユニットに保存されるので、世界中のどこでもお客様に密着した場所で生産を行えますし、製造業者も配合データを公開する必要がありません。
Q:「レノウエーブ®(Rhenowave®)」は、どのような配合ゴムでも分析できるのですか、それとも制限があるのでしょうか。
○ケンパー:原理上は、100°C以上の配合ゴムであれば、どのようなものでも分析できます。また、2台の超音波変換器の間の距離を柔軟に調節することもできます。つまり、製造業者は、あらゆる質量と体積を持った様々な配合ゴムを分析することが可能となります。さらに、「レノウエーブ®(Rhenowave®)」は、黒色の配合物の分析もできます。これはとても重要な点です。なぜなら、ほとんどの配合物は煤煙を含んで黒いため、、赤外分光法やUV/VIS分光法など、視覚的インライン方法では、判別できないからです。
Q:即時プロセス分析についてですが、「レノウエーブ®(Rhenowave®)」を利用すると、生産される製品の品質にどの程度効果がありますか。
ベッケム:製品品質への要求は、ますます高まっており、他の産業と同様にゴム産業にも当てはまります。品質に対する意識も高まっているからこそ、現在、配合物全体の特徴を分析する方法が、製造業者に不可欠になっています。その結果として、私たちは、品質管理の全く新しい基準を打ち立てるに至りました。
○ケンパー:もう少しこの点を掘り下げて考えてみましょう。これまで、お客様は、配合物に関する変動係数の計算を行っていませんでしたが、この計算では、配合物の均一性を測定し、結論を引き出すことができます。これまで、このような要求が最終のお客様からなかったのも事実です。しかし、「レノウエーブ®(Rhenowave®)」によって、配合物の特徴の測定が可能になり、私たちは、品質管理の新たなパラメータを導入することができました。この新しいパラメータは、本製品独自のセールスポイントになっています。
Q:こうした様々なメリットに興味を持ったお客様は、どこで「レノウエーブ®(Rhenowave®)」を入手できるのですか。
ベッケム:ご興味をお持ちいただけましたら、私たちの研究所までご足労いただき、ご自分の目で、このデバイスがどのように機能し、どんなことができるのかを確認していただくことをお勧めします。実際にお客様の配合物を使ってデモンストレーションを行い、「レノウエーブ®(Rhenowave®)」が、お客様の目的に適したものであるかを、その場で判断することができます。その上で、デバイスをレンタルしていただくことになります。
Q:これまでに、どのようなフィードバックをいただいていますか。
ベッケム:ベッケム:これまでのところ、お客様には、大変ご満足いただいています。最近では、ランクセスのブラジル拠点で、このデバイスのデモンストレーションを行いました。この拠点では、タイヤ製造に使用されるブラダーを生産しているのですが、デモンストレーションをご覧になったお客様は大変驚かれていました。手順はいつでも同じです。モニターで配合物の品質を確認できることがわかると、すぐにピンとくるようです。ご自分の目で確認するまで、そんなことが可能であるとは、まったく考えていなかったのですから。
Q:これからのゴム産業にとって、「レノウエーブ®(Rhenowave®)」はどのぐらい重要なのでしょうか。
○ケンパー:ゴム産業は、過去30年にわたって、よりコスト効率の高い、連続配合工程における配合ゴムの製造に努めてきました。問題は、この連続配合工程が、従来の不連続の配合工程に比べて、欠陥品を出しやすいということです。そこで「レノウエーブ®(Rhenowave®)」が登場するわけです。このデバイスは、そうした欠陥につながる要因を即座に発見し、インライン品質管理によって、直ちに除去することができます。つまり製造業者は、製造完了時点で、製品の正確な組成を保証することができるのです。ランクセスは、製造業者が、連続配合工程を効率的に使用できるよう、それをサポートするツールを提供しています。