ドローンが飛び立つとプロペラの出す大きな機械音は、あっという間に遠ざかり、小さなうなり音へと変わりました。ドローンは、たった数秒で鳥のように空高く上昇。北側に急な崖がそびえ立つ、見慣れた森の景色は、上から全体を見渡すと、いつもと違って見えます。森の端にある岩の上に座り、操縦者はタブレットを眺め、ドローンのカメラから送られてくる景色を楽しんでいます。
ドローンの印象的な敏捷性と大胆な飛行は、ランクセスを含む複数の企業がドローン向けに開発した、高性能プラスチックにより実現しました。プラスチックをドローンのプロペラに採用するにあたっては、直径やピッチの調整と同様に、素材や重量も極めて重要になります。通常、これらのプロペラの素材には、カーボンやグラスファイバーで強化されたナイロンが採用されていますが、ランクセスの秘密兵器はDurethan(デュレタン)です。デュレタンは、まるでドローンの精密部品を作り出すことを念頭においていたかのような高性能プラスチック製品で、ブレードやプロペラだけでなく、ボディやランディングギアなどドローンの複数用途に利用できます。
ランクセスは、その独自のソリューションでドローンのプロペラの軽量化に成功しています。羽のように軽くし、衝撃耐性を高めることにより、ドローンは非常に高い高度からの落下にも耐えることができるようになります。また、金属よりもプラスチックを使用した方が、信号への干渉を軽減できます。ランクセスの高性能プラスチックを使用することで、ドローンはより高く、早く、遠くへ、そして安全に飛行することができるのです。
飛びまわるオールラウンダー
UAV(無人航空機)が登場してから数十年経ちました。しかし、誰でも操縦できるよう、急速な進化を遂げたのはここ数年です。当初の目的は軍事利用でしたが、ドローンは現在、プライベートやビジネスの用途で多く活用されています。将来的には、日常生活の一部として不可欠なものになっていくでしょう。写真、動画、輸送、そして趣味の飛行といった領域は全て、企業、官庁、農場、地方機関、そして急速に増えている個人利用者が見い出した、ドローンの活用分野です。旅行、レジャー、物流、監視またはセキュリティの分野において、ドローンはすでに、サービスの計画やレジャーアクティビティの一部として活用されています。
スポーツイベントや監視目的でのドローン利用はすでに確立されています。小包の配達については、急ピッチで実験が進められています。現在は夢物語のように思えたとしても、数年で急速に実現する可能性があります。ドローンは輸送手段になると見据えて、輸送・物流の大企業はすでに、配達業務にドローンを組み入れるための方法を模索しています。
カメラでズームしたり、被写体に直接近づいたりしても、その画像は驚くほど鮮明です。木の上で弧を描くように回転した後、巨大な岩にそって急激に高度を下げました。操縦者は操縦するにつれ、より大胆な操作で飛行させようとしますが、ドローンはもう応答しません。組み込まれたリソース管理が、最後の指示を実行すれば、離陸場所に戻る前にクラッシュすると計算したからです。なぜなら、バッテリーがほとんど残っていなかったのです。
軽量化による長時間フライトの実現
今後のドローンには、主要な設計上の課題があります。長時間飛行が求められており、操縦者との接続を維持しながら長距離飛行する必要があります。同時に、ドローンは重量のある物を運ぶ必要があるため、可能な限りの軽量化が望まれます。その点で、ドローンはF1のレースに似ています。1グラム単位の攻防です。今シーズン、セバスチャン・ベッテルは新しい軽量ヘルメットを使用することで、50グラム軽量化しました。この結果、ラップあたりのタイムが0.002秒縮まりました。驚くほど小さなアドバンテージですが、それが勝敗を分けることにもなり得るのです。
より高く、より早く、より遠くへ。これもまた、ドローン操縦者の目標です。最高のパフォーマンスを出すために、ドローンは軽く、頑丈でなければなりません。より軽い素材を使用し、ドローンの重量を軽くすることで、振動とノイズが減り、同時に飛行時間を延長できます。つまり、ドローンはより静かに、スムーズに、そして何よりも遠くへ飛ぶことができるということです。
プロペラとブレードはランクセスの高性能プラスチック、デュレタンで作られています。デュレタンは、最適な重量配分、高い飛行安定性、およびバランスの取れた機械特性といった点でも突出しており、デュレタン製のプロペラはドローンの寿命まで持続して機能するといわれています。
資源の保護
2017年、世界中でおよそ300万台のドローンが販売されました。その数の増加は更に加速しています。レクリエーションや農業、さらに救助活動や軍事活動においても、頻繁にドローンを見かけるようになっています。ドローンは、これまでは実現できなかった視点からの、息をのむような映像を撮影できるだけでなく、リアルタイムモニタリングの補助も可能です。地上を走る乗り物には困難な場所でも、ドローンはあらゆる障害物を避けて上昇することができます。また、タイヤとは異なり、プロペラは摩耗しないため、資源の節約にもなります。
「急激なハイテク産業の発展と電気駆動装置の需要増という観点から、ランクセスは自社製品の幅広い応用可能性を認識しています。ランクセス製品であるPA6、PA66、PBTをベースに、高品質な最終製品への需要に合致した、革新的なソリューションを開発しました」と、グローバルプロダクト&アプリケーション開発(GPAD)責任者であるアクセル・タッチレンスキ博士は述べています。特殊化学品メーカーとして、ランクセスは組織的にソリューションを研究し、製品改良、資源保護、アプリケーション効率の向上を実現します。