Green corn field growing up

堆肥の山からクリーンな電気

バイオガスへの注目が高まっています。この非常に環境に優しいエネルギー源に頼る農家がますます増えています。それは驚くことではありません。バイオガスを作り出す原理および必要な技術が基本的に簡単だからです。バイオガスはまた、クリーンな電気やいくらかの良質な肥料に加えて、莫大な利益を生み出すこともできます。

 “最高の牛”はミルクを提供しない

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青々とした緑の草原では、牛が草を食み、アヒルがクワックワッと鳴いています。夏と秋には、たわわに果物が実った木々や、長い並木道、そして平坦な田園地帯にある唯一の丘の上に建つ絵に描いたように見事な城。もしあなたがこのような田園生活がお好みなら、ここクレーフェで働く人々は、それをすべて手に入れています。

イオネル・コンスタンティンは、そんな1人です。茶色の革ジャケットを着たこの頭の幾分薄くなった男性は、ハウス・リズウィックの敷地に沿って我々を先導しています。ハウス・リズウィックは一種の研究農場で、この絵のような景色の真ん中で、ドイツのノルトライン‐ヴェストファーレン州の農業会議所によって運営されています。ドイツ連邦共和国の西端地域の一部、ちょうどオランダとの国境から数キロメートルのところにあるこの場所では、田園地帯の新鮮な空気と、オープン厩舎に収容されている200頭以上の牛にたった今与えられているサイレージ(飼料)の匂いが入り交じっているのに気づきます。コンスタンティンは、動物たちがほとんど音を立てずにわらを食べている箱に目をやります。ほとんど、牛から音は聞こえません。コンスタンティンは、自分が目にした光景に満足しています。彼は前に進み、一見したところ牧歌的な環境と調和しない何かの前に、突然立ちます。それは、6つのシリンダー形構造(各々の高さは約5m)が配置されています。その内の2つは、巨大なアフリカの小屋をなんとなく思い出させるような円錐屋根がついています。これらの前に、車2台分の車庫ほどの規模の緑色の建物が建っています。中から、低いブーンという音は聞こえてきます。「これは、我々のバイオガスプラントです」とコンスタンティンは言います。「我々の納屋での最高の牛です」と、彼は笑って付け加えます。我々はバイオガスを思い浮かべ匂いをかぎます — しかし、土、サイレージ、そして湿っぽい葉以外、何の臭いもしません。それで全部なのです。

 糞から電気

環境に優しい電気はここで生産される:円形の容器はバイオガスプラントの一部

環境に優しい電気はここで生産される:円形の容器はバイオガスプラントの一部

2つの「小屋」の中では、大量の活動が行なわれているのです。実はこの2つの小屋は発酵槽、つまり、この施設の反応器なのです。確かに、バイオガスはゴミからお金を儲ける方法を示す最高の例です。農業活動で生じる可能性のあるあらゆる有機原料を発酵槽に「入れることができる」からです。 1日につき、クレーフェの農場労働者は、約1トンの残った飼料を578㎥の容器に入れます。また、1から1.5トンの草とトウモロコシのサイレージ、そして約5~6㎥の低臭牛泥漿を加えます。最終的に創出されるのは電気です — 約75kWのプラントから1,800 kW/時の電気が毎日生み出されます。それだけでなく、この施設はクレーフェの革新的な研究農場全体にも十分な熱を供給しています。

 問題を引き起こす1つの副産物

Fermenting plants such as corn produces the combustible gas methane, which can be used to drive an electricity generator.

トウモロコシなどの発酵する植物が可燃性のメタンガスを発生し、これで発電機を駆動することができます。

バイオガスプラントの仕組みを説明するのは簡単です。まず、38℃の泥漿液内のバクテリアは、周りの全ての物質を取り込み消費します。このバクテリアがなければ、物質は空気中で腐敗してしまいます。次に、バクテリアは代謝プロセスの最後にメタンを排出します。コンスタンティンは、不可解な緑色の施設へのドアを開けて、そのガスで何ができるのかを見せてくれます。低いブーンという音は、今はトラクターのエンジン音に聞こえ、機械油のわずかな匂いが空気中にします。施設の床は、足元で振動しています。「メタンは可燃性です」と、コンスタンティンは説明してくれます。実際、メタンガスはガソリンあるいはディーゼルの代わりに内燃エンジンを動かすのに用いることができます — そしてまさにクレーフェではトラックのエンジンと同じ大きさのエンジンを動かしているのです。このエンジンは、電気を発生する発電機を駆動しています。それが簡単にいえばバイオガスプラントの基本的な構成なのです。

しかし、実際の稼働となるともう少し複雑になります。 よく言われるように、「何事にも細部に落とし穴がある」です。そして、ここでの細部とは、エンジンを保持する施設のドアの横に取り付けられる小さな測定装置のプラスチックスクリーン内にあります。 「25ppm」と、コンスタンティンは満足した声をあげて言います。「これは良い値です。40ppmになると深刻な事態になり始めます。」

レバクーゼン(ドイツ)に拠点を置く特殊化学品メーカー、ランクセス(LANXESS)グループの顧客技術コンサルタントであるグレガー・ヘルマンスは、コンスタンティンが何をここで言っているかについて説明することができます。ppmとは、科学技術分野で使われる測定値で、100万分の1を表します。1%が100分の1であるのと同じように、各部分は100万分の1を表します。言い換えると、ppmは物質B100万に対する物質Aの量を表します。

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「ここでは、我々はバイオガスの硫化水素含有量について話しています」と、ここ数年間、内部から多くのバイオガスプラントを見てきたヘルマンスは言います。彼は、またクレーフェでコンスタンティンの測定装置の前でクリップボードを持って立ち、数値の測定もしました。「硫化水素は、バイオマスが発酵するとき、自動的にできる副産物です。」とヘルマンスは言います。「それについて何もしなければ、最高で5,000ppmにもなります。これは許容できるレベルの100倍以上です。」

硫化水素は、誰でも知っている数少ない化学化合物の1つです — 臭いが腐った卵のようなガスです。しかし、バイオガス反応器はガス密封されている(密封しなければガスが漏れるので、発生したメタンを収集できません。)ので、臭いは問題ではありません。ヘルマンスが説明するように問題は「硫化水素がエンジンにダメージを与え、最終的に破壊してしまう」ことです。ガスは、バイオガス反応器内に常に存在する水と反応し、硫酸ほど浸食性の強くない亜硫酸を形成します。硫酸は自動車の電池に使用されることでよく知られ、鉄を溶かすこともできる酸です。それでも、亜硫酸は時間とともに発酵槽、ガスライン、そしてエンジンピストンに損傷を与えるのに十分な浸食性を持っています。「従って、硫化水素は除去されなければなりません。」とヘルマンスは説明します。「そして、それがまさにランクセスの製品「バイオキサイド®(Bayoxide ®) E 16」の用途なのです。」

 ガスの浄化

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ランクセスの化学者は、望ましくない硫化水素がまだ発酵槽で泡立つ泥漿液の中にあるうちに、技を使って除去します。腐ったような臭いのするガスが、ガソリンエンジン中の金属に対するより、もっと強く反応する物質-針鉄鉱(鉱物の微細結晶)を泥漿、サイレージそして残った飼料に加えます。 化学的にいうと、針鉄鉱は硫化水素と接触すると、無害な硫化鉄に迅速かつ容易に変化する酸化鉄化合物です。自然界で見つかる最も卓越した硫化ミネラルはパイライト(黄鉄鉱)で、フールズ・ゴールドとしても知られています。

天然の針鉄鉱は、結晶化するとき針状の構造を作る平凡な鉱石です。しかし、バイオガス脱硫プロセスの為、それをわざわざ採掘する必要はありません。なぜなら、ヘルマンスと彼の同僚たちが、合成物質から産業的に生産された硫化水素を除去するバイオキサイドE16を作成したからです。 「我々は、Fertilisers Order(肥料に関する規定)に準拠する脱硫ソリューションを開発したかったのです。」とヘルマンスは説明します。「従って、我々の材料は特に不要物質が含有していないものでなければならなかったので、課題は純度が高いにもかかわらず製品の価格を抑える製造プロセスを発明することでした。
多くの研究を経て、我々は最近、その実現に成功しました。かつてから、ランクセスはバイオキサイドE16のような酸化鉄の生産における豊富な経験を有しています。実際、85年以上にわたりランクセスは環境に優しく耐候性に優れた顔料を製造するため酸化鉄を使ってきました。そして、この分野での専門知識から多大な利益を得たのです。」

バイオガスの脱硫に酸化鉄を使うことに加え、ランクセスは様々な用途のために酸化鉄顔料を開発してきました。コンクリートの着色、エアバッグ、ブレーキパッド、触媒コンバーターの製造、そしてコピー機やレーザープリンターに使われるトナー用顔料などその範囲は多岐にわたります。また、飲料水や廃水を浄化するための吸着剤に顔料を使用することもできます

 理想的な脱硫ソリューション

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環境に優しく、経済的、清潔で、何よりも安全な選択肢が少なかったため、バイオキサイドE16はバイオガスプラントのオペレーターにとって、まさに真の天の恵みです。安全は非常に重要な事項です。バクテリアがガスを無害な硫黄に分解することができる一番経済的なソリューションは、空気を発酵槽にポンプで注入する方法ですが、バイオガスが薄まるため能率が悪く、危険でもあります。「爆発するかもしれないので、メタンと酸素を混ぜることはできません」と、コンスタンティンは言います。従って、プラントの中には、泡立っているバイオマスの蒸溜に天然の針鉄鉱を少量入れるところもありました。しかし、控え目に言っても、発酵残渣が農場に拡散されると、本当に環境に良いのかどうかは、非常に疑わしいものです。 それは、未処理の鉱石には、食物に望ましくないような重金属が時々含まれているからです。

鉄塩溶液を混ぜ入れるのも良いアイデアではありませんでした。その理由は、これらの溶液は塩素を含有しており、非常に腐食性が高いからです。そして、「水溶液が比較的少量の鉄を含むという事実も考慮しなければなりません。」と、グレガー・ヘルマンスは言います。「対照的に、バイオキサイドE16の粉はほぼ60%鉄から生成されています。つまり、それは鉄の集約度が非常に高いことを意味します。」もう1つの利点は、バイオキサイドE16が大変使いやすいということです。農場労働者は、単に発酵槽フィーダー・システムに数個の袋を放り入れるだけでいいのです。紙袋は時間とともに溶解するので、高価な薬品投与システムを必要としません。

 世界のための環境に優しいエネルギー

Biogas is one of the key elements of Germany’s “energy transition.” The environmentally friendly method of generating electricity and gas in simple fermenters is gaining more and more adherents worldwide.

バイオガスは、ドイツの「エネルギー移行」の鍵となる要素の1つです。単純な発酵槽で電気やガスを生み出す、環境に優しいこの方法が、世界中でますます多くの支持者を得ています。

一方で、コンスタンティンの試験施設では、何らかの損傷が生じる前に、発酵槽からその不快な腐った卵の臭いがするガスを抽出するために、長い間活性炭を使っていました。その方法は高価で、時間もかかり、4~6週おきにフィルターを交換する必要がありました。バイオキサイドE16も多少の活性炭と共に使われなければなりませんが、バイオキサイドE16は「活性炭を加える前に、大体のガスを脱硫することができます。」とコンスタンティンは言います。そして、大量の活性炭を使うための時間と出費を考慮すれば、バイオキサイドE16の方が概してより経済的です。反応器にランクセスの人工針鉄鉱の量を増やすと、比較的高価な活性炭をあまり使わなくてすみます。「すぐにこの理論をテストします」とコンスタンティンは言います。

たとえ活性炭をまだ使われなければならないとしても、コンスタンティンの同僚が2、3日ごとにバイオガスプラントの第2発酵槽から抽出する発酵材料を、不安なしに農場に拡散することができると、ヘルマンスは言います。これに同感するコンスタンティンは、次のように説明します。「それは発酵残渣がまだ窒素を含むので、そこでは最高の肥料の1つです。植物の成長には窒素が必要なのです。実際、窒素は以前よりさらに凝集しています。」とコンスタンティンは説明します。

成熟したテクノロジー

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それでは、バイオガスは全ての農民に成果をあげますか? 「はい」と、コンスタンティンは即答します。「技術は完全に成熟した段階に達しています。2002年に稼働開始したとき、我々のプラントはドイツで初めてのシステムの1つでした。 当時、我々には十分な経験がなかったため、その後多くの実験を実施しました。プラント自体の費用はずいぶん前に償却し、現在は利益を生み出しています。」原則として、十分な大きさの農場と投資費用のおよそ半分を支払える資本を持っている人は誰でも、バイオガス施設を運用することができると、コンスタンティンは述べています。

多くの人々は類似した結論に達しています。それがドイツにおいてバイオガスプラントの数が過去13年間で10倍に増加した理由です。その結果、バイオガスで動くエンジンは、2011年にほぼ3,000メガワットの電気をドイツ各地に供給しました。これは大きな2つの原子力発電所の電気供給量に相当します。この技術は世界の他の地域でもますます普及しており、小規模あるいは大規模な用途で使用されています。例えば中国とインドでは、すでにほぼCO2ニュートラルのメガワット規模のバイオガスプラントを稼働しています。一方、カンボジアでは家庭用発酵槽でガスを生産し、家庭で料理に使っています。 実際、2〜3㎥の小さなバイオガス施設を稼働するのに十分な糞を得るためには、農民は500羽の鶏が必要なだけです。

コンスタンティンは別れを告げます。 緑色の施設ではエンジンがソフトに音をたて続けています。近くの非常に清潔な牛舎の牛はエサを食べ終わりました。コンスタンティンは、電気を発生させるために、後で動物の飼料の残りを活用します。我々は、もう一度最後に空気のにおいをかぎます。硫化水素か腐った卵のにおいを感じますか? いいえ。ただ田園地帯の空気と湿った地球のにおいがするだけです。